2013年4月16日火曜日

HMGセミナー1章:核酸の構造と遺伝子発現 (後半)

担当:城田松之
参加者:18名




第1章の後半ではRNAのスプライシングを含む転写後の調節,タンパク質の翻訳・翻訳後修飾が取り上げられています.

議論した点



翻訳後修飾するぐらいならアミノ酸を増やしたらいいのではないのか?


生物はアミノ酸の種類を20種類に制限する一方で,翻訳後のアミノ酸を修飾することで要素の多様性を生み出しているように見える.この戦略にどのような利点があるのかを議論した.

進化上の制約

大昔に遺伝暗号が決まって,その後高等生物になるに従っていろいろな機能的要請に応えるために翻訳後修飾の機構ができたのでは.
翻訳後修飾は種によって違いがあるのか?
大腸菌では翻訳後修飾がないので,ヒトの遺伝子を導入して発現させても機能がなかったりする.

アミノ酸のバリエーションを豊かにするため

アミノ酸数×修飾で乗数的に種類が増える
コードするアミノ酸の種類を増やすだけでは加算的にしか増えない.

修飾アミノ酸がシグナルになっている(環境要因への応答の制御)

リン酸化が増殖などのシグナルを伝える
糖鎖は細胞外分泌蛋白質につけられる
ゴルジ体で修飾が起こる.
蛋白質の細胞内でのソーティング(決まった場所への輸送)に関与している
同じような機能は蛋白質のN末端のシグナル配列も持っている.
修飾するかどうかはどこに書かれているのか?



イントロンの認識部位は精度よく予測できるのか?


スプライシングサイトの認識配列は短いため,これだけで正しく決定できるかについて議論した.

疑問点

ゲノム配列上からスプライシング部位のコンセンサスとして知られている配列をピックアップした時にどのくらい真のスプライスサイトとして当るのだろうか.
擬陽性がたくさんできてくる可能性

推測


教科書に書かれているルールの他にも認識配列があるのではないか.
配列上の特徴から一意に決まるというよりも確率的に決まっているのではないか.
実際,臓器特異的なスプライシングバリアントがあるように,スプライシングの有無は変化する現象である.


その他の議論点



イントロンとRNAスプライシング


イントロンがなかったらどうなるか,役割は?
イントロンには変異が入ってよいのか?
イントロンとは何か?
スプライシングの2種類のコンセンサス配列の違いは何か?
長い遺伝子でほとんどイントロンでよいのか?スプライシングできるのだろうか?
スプライシングバリアントと立体構造の関係はあるのか?
翻訳後修飾でメチオニンがとれるものととれないものの違いは?
イントロンがあると複製時にエキソンにエラーが入る率を下げられるのか?


遺伝暗号について


ミトコンドリアの遺伝暗号が違うのはなぜか?
遺伝暗号はなぜ今のようなものにあったのか?
コドンへの環境要因をリボソームはどうやって判断しているのか


その他


蛋白質構造についてもっとよく知りたい

Cap構造が高エネルギー結合をしているのはなぜか?


まとめ

 真核生物ではRNAやタンパク質は転写・翻訳されたままの状態で使われるのではなく,様々な修飾を受けます.この点がセミナー参加者の興味を引きつけたようでした.特に,RNAスプライシングの機構にはたくさんの議論点が挙げられました.時間の都合上議論しきれなかったのが残念です.
一方,タンパク質の修飾については進化上の制約や機能の多様性の観点から利点がありそうだという方向にまとまりました.

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