2012年11月1日木曜日

MBCセミナー 5-1: DNA塩基配列の維持


担当:沼倉
参加者:11名

節の概要:
・生物が種として長期的に生存するには,環境変化への適応のためにDNAの変化が必要である.一方で,細胞の短期的生存にはDNAの変化は防がなければならない.
・1回のDNA複製あたりの変異率は,生物種に共通して10^9塩基に1つであることが観察されており,正確な複製が行われている.

議論した点:
1. DNA複製が完璧すぎて環境に適応できなかった例はあるか.
・例としては考えにくい...
・では,多様性は必然?
  - 1/10^9は,多様性のための生物的な最適解なのか,DNA修復の限界であるのか.
   - 変異率の調整は,DNAポリメラーゼの活性や,DNA修復機構の活性で調節可能.
    - DNAポリメラーゼのホモログはある?
    - PCRのクオリティのための研究などで調べられている?
     - 工学的な観点から言えば,まだ変異率を下げられそう?
      - HDDなどのビットのエラーレートと比べて?
     - スピードとクオリティはトレードオフ
      - 幹細胞とその他の細胞では,幹細胞の方が守られてほしいが,変異率は違うのか.
    - 大腸菌では,環境の変化があったときにS.O.Sを出して変異率を上げることがある.
     - ウイルスなどはそもそも変異率高い方が有利?
      - 変異率の高い限界(DNA複製の正確さの下限)はどこか.
     - ヒトなどの高等生物では変異率を可変にする例はない?
・生殖細胞と体細胞での変異率の最適化(切り分け)はなされているか.
  - 生物は生殖細胞を通して,次世代に受け継ぐのが使命.
  - 生殖細胞ではある程度変異が欲しいが,体細胞のDNA複製は完璧で良いのでは.

2. 変異の蓄積について
・ヒトゲノムの長さは3*10^9なので,1回のDNA複製あたり,変異が3個入る.
  - 分裂時のDNA複製で変異が入った細胞がまた分裂するので,変異は蓄積する.
  - 例えば10年後の自分のゲノムは今の自分のゲノムとどれくらい違う?(同じだと思っていたが...)
   - 機能が損なわれる変異を持った細胞は死んで,一定以上の変異は蓄積されない?
   - DNA複製時以外の,環境要因による変異の影響はどの程度?
    - がん化するほどの変異の原因は環境要因と考えられている?
・de novo変異の観察について
  - trioで観察するが,子が成人になってからそのゲノムを読むのでは体細胞分裂での変異も含めてしまっている?
  - 生殖細胞のゲノムをみないと観察できない?


他の議論点:
・変異率がもっと低ければより複雑な生物が生まれうるのか.
・変異が入っても機能が失われない遺伝子の例.
・DNAの長さ,遺伝子数,種内での個体数から,限界変異率を算出できないか.
・がんは生命のいつの時代からあるのか.
・環境要因による変異は何世代くらい受け継がれるのか.


感想:
5.1節が3ページと少なかったが,内容としては生物の進化の根本となるものであり,活発な議論を行うことができた.

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